ママの働き方

「会社員時代とはやりがいが違う」他にない子連れパン教室を開くママのストーリー

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葛西臨海公園の自宅で『Mama Café 子連れパン教室』という、パン教室を開いている竹内絢香さん。

優しい物腰の陰で着々と努力を積み重ねている、竹内さんの頑張り屋な側面について、深堀りしていきます。

長く働けるか不安……その思いが学びはじめるきっかけ

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父の仕事の関係で、私自身、幼少期を海外で過ごしました。

英語力を活かすべく、大学卒業後に最初に就職をしたのは、その頃開業したばかりのお台場の会員制ホテル。

フロント業務、フロアアテンダント、あとは館内の和食レストランでの接客などを行う、ホテルマンとして働いていたんです。

顧客層は高収入のエグゼクティブクラスの人々。

ですから当然、ホテルの利用者は海外からのお客様の比率も高く、日常的に英語で会話をしていました。

———お話を聞く限りでは、まさしく天職のように思えますよね。

もちろん、やりがいはあったし楽しくもあったのですが、勤務体系はシフト制で夜勤もある。「結婚出産など後々を考えると、長く続けられる仕事ではないな」と、勤め始めてしばらくした頃から、そんな思いを抱いていて。

働き方の選択肢を増やすためにも、以前から興味を持っていた料理を学ぶため、休みの日や、(シフト制なので)空いている時間を使って、大手のクッキングスクールに通うことにしたんです。

そこでは料理、パン、ケーキ、和菓子……開催されているひと通りのコースに通いました。

———和菓子?珍しいですね。

ええ(笑)、いろいろな方によく驚かれるんですが、ホテルでは和食レストランでの仕事もあったので、役立てられるといいなと思って学び始めたんです。

努力が認められクッキングスクールの講師に転職!

通っている途中で社員の方に声をかけられまして、ホテルの職をやめ、クッキングスクールの講師として働くようになりました。

このスクールは、人気講師はエプロンの色からして違うんです。

だから、社員や講師だけでなく、受講生にも「ああ、この講師は責任者なんだな」というのが、一目でわかってしまうんです。

———恐ろしいシステムですね(笑)。

そうかもしれないですね(笑)。
でも、それがあったから、どうしたら限られた時間内でより多くのことを受講生の人に理解してもらい、満足して帰ってもらえるかを、一層考えるようにもなりました。

自分自身のモチベーションになっていたと思います。

実は私、営業成績が全国で一位だったこともあるんですよ(笑)。

青天の霹靂!楽しいはずの専業主婦生活が……

結婚を経て、第一子の出産を機にこのクッキングスクールを退職しました。

当初は、子どもの子育てや家事にと、これから始まる専業主婦生活をどのように送ろうかいろいろと思い描いて、とても楽しみにしていたんです。

ところが、息子が生後6ヶ月くらいの時、産後うつのような状態になってしまって……。

夫は家事にも育児にもとても協力的な人で、『疲れたら休んでていいよ』と言ってくれる。多分、世間から見れば私はとても恵まれている。なのにどんどん、気分が塞ぎ込みがちになってしまって。

自分でも理由がわからなく、それで余計に落ち込む……完全に悪循環にはまっていました。

そんな時、ママ友がある集まりに連れ出してくれたんです。

当時は東雲に住んでいたのですが、私と同じように、手に職を持っていながらも様々な事情で働くことができないママたちの集まりでした。

———メンバーは何名くらいいたんですか?

全部で30名くらいだったかな?
ほとんどの方が何かしらの資格をお持ちになっていて、近所の集会所のようなスペースを借りて、持ち回りで教室を開いていたんです。

今日はこの人が講師で、私は参加者、みたいな感じで。
参加者ではあるけれど、あるときは講師になる人もいる、そういった集まりでした。

———どのような教室が開かれていたんですか?

マタニティヨガやリトミック、ベビーマッサージもありましたし、本当に色々です。

全ての教室が子連れで参加でき、参加費はほとんどがワンコイン以内だったので、参加しやすくて大盛況でした。

働くって楽しい! 自分の経験が教室のヒントに

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はじめは私も参加するのみだったんですが、そこで講師をやっているママ友に、「あなたもパン講座、開いてみない?」と勧められて。

子どもがいるところで教えるって大丈夫だろうかという不安や、子育ての合間に教室の準備をすることの大変さもあったのですが、それよりも、久々に自分がワクワクしているのに気づいたんです。

パン作りを教えている時間も、心から楽しいと思えて息抜きになっていて……。
そこでハッとしたんですね。
ああ、私は専業主婦に向いていないんだな、働いていないとダメになってしまうんだな、働くことが好きだったんだな、と。

このときの一連の経験が、今につながっているように思います。

———今のお仕事への布石になったということでしょうか?

はい。
それまでの自分自身もそうでしたが、世の中のママたちって、果たして自分の時間を取れているんだろうか、と。自分の息抜きの時間すらとれないママたちがたくさんいるんじゃないか、と考えたんです。

そんなママたちの何らかの力になりたいという思いが、「子連れパン教室」開催の原動力になったと思うんです。

子育てしながら、マルチタスクを自分に課した

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今のところに引っ越してきた3年前から、自宅でのパン教室を始めました。
保育園は激戦区ということもあって、子どもを預けることができなかったため、自分が働くためには自宅開業、という形に自然と向かった感じです。

開業当初から、お子さん連れで参加できる形で、パン教室を開いています。

ベビーならママがおんぶや抱っこして参加できますし、好きな時に授乳しながらレッスンを見られるように、椅子も準備しています。
隣接した部屋にオムツ替えスペースやプレイルームも用意して、ママが気負わず参加できるように配慮しました。

とはいえ、最初は週に2回の開催だったんです。

でも、ほどなくあることに気づいたんですね。
パンについての知識や経験を重ねるうちに、私がそれまで得ていたパン作りの知識や技術は、イースト菌をたくさん使ったものだったな、と。
イースト菌をたくさん使うパンって、すぐ固くなるし、実はあまり日持ちしないし、美味しくないということに気が付いたんです(笑)。

それで、もっとパンのことを学ぼうと思って、二子玉川にある天然酵母パンのお店で、修行がてら働くことにしたんです。

———働いたのは週何日ですか?

週1日です。
カフェも併設したパン工房だったので、パンの仕込みからカフェのランチづくりから、会計などお店の運営に必要なことに一通り携わる必要があり、出勤日は、朝の9:00から夜の10:00まで、ずっと働きどおし。

私の両親は遠方に住んでいることもあり、その間、子どもの世話は、夫がお休みの時は夫に、夫が出勤の時は夫の両親にお願いをしていました。

ただし、最初から、1年半だけの期間限定でやろうと決めていました。
家族にも面接の時にもその旨を伝えて。

実は同時進行で、週に2回、フードコーディネーターの養成講座にも通っていたんです。

———え?同時進行で?

はい(笑)。
あと、英語でパン作りを教える出張教室も、赤坂、白金、豊洲で、月に計4回。

———そんなに?休む間がなかったんじゃないですか?

そうですね。
ただ、当時は自宅パン教室のほうの集客があまりなくって。

集客が足りないということは、自分に何か足りないところがあるんじゃないかと思ったんですね。
それが何なのか突き止めるために、勉強のつもりでやろうと。

出張パン教室は昼のコースと夜のコースとあったんですが、特に夜のコースになると、場所柄もあって、英語を勉強したい仕事帰りのサラリーマンの方とか、外国人の方ばかり。

自宅でのパン教室とは全く違ったターゲット層だったため、「英語で世界のパンを作る」がコンセプトでした。
同じパンを教えるのにも、切り口が全く違うんです。

無我夢中でやる中で、見えてくるものがある

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———そこまでして、竹内さんを学びに駆り立てたものって、何だったんでしょう?

独立してしっかりやっていきたいという思いがまずあったのと、子どもと一緒にいながらも働ける「自宅開業」という働き方に、強く惹かれたからですね。

一方で、無我夢中でやっていくなかで見えてきたものもあって。

天然酵母のパン作りを学んでみたら、発酵を待っている間は時間が空くことが分かった。
やることのない時間ができたから、その時間にお料理できたら面白いんじゃないかな、と思ったのがきっかけで、フードコーディネーターの勉強をすることにしたんです。

自宅開業をして半年後には、「忙しい女性が、合間に作れるパン」というコンセプトで、3種類のパンと料理を教える、今のスタイルにたどり着きました。

———お子さんの預かりありの教室を開くきっかけは?

二人目の息子を出産後のことになるんですが、受講生の方の中に、出産前に幼稚園で働いていた方がいらっしゃったんです。

でも私と同じく、働きたいと思ったのに預ける場所がなく、一時保育を利用してでも働くとなると、赤字になってしまうと悩んでいらっしゃって。

そのころ、私は私で、二人目はまだ生後2ヶ月でしたし、もう少し休んでいようと思っていたんですけれど、受講希望者が多くて、教室の再開を迷っていました。

そうしたらその方が、「じゃ、私が自分の子と一緒に面倒見るよ」と言ってくださったんですね。
二人のニーズが合致して、じゃあ、やってみようかと始めたのが、お子さんの預かりのきっかけでした。

はじめは、パンを作るところで預かりをやって教室自体の質が下がったり、事故でもあったらどうしようとも思ったんですが、やってみたら、幸いなことに今までそうしたことは一度もなく、受講生の方にも専念して講座を受けられると好評で。

お子さんを預ける方は、預かりを担当してくださる方へ直接1,000円お支払いいただく、というシステムで、その後はやっています。

みんながハッピーになる場でありたい

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———お子さんの預かりの他にも、将来的に自宅でパン教室を開きたい生徒のママさんの中からアシスタントを募っているそうですね。

はい。
教室を開催するとなると、やはり準備や片付けなどいろいろあって、意外とこれが大変なんです。

復帰したときは、パン教室は週に2回だったんですが、その翌月には週3回、復帰3ヶ月目からはずっと週5回開催になっていまして。
これも、アシスタントを引き受けてくださる方がいるから、実現できていると思います。

ママさんたちのコミュニティの中には、保育園に子どもを預けられないからというだけでなく、旦那さんが転勤族でいつ引っ越すかわからないなど、様々な事情から働きたいけれども働けない方が、意外といるものなんですよね。
だから、「手伝うよ!」と名乗り出てくださる方って、絶対にいる。

子連れでママたちが参加できる教室がない、子どもを預ける場所がない、働きたいけど働く場がない。だったら自分で作ってやってしまおう、と、そういう思いがあってここまできました。

せっかくこういう形で教室をやるのだから、私も、預かりの方も、お手伝いの方も、受講生も、お子さんも、みんながハッピーになる場でありたいですよね。

今度は自分が、悩む女性の背中を押してあげたい!

独立して思うのは、やはり精神面……やりがいが、一番違います。

企業に属していた時には、自分の代わりなんていくらでもいるんだろうな、と、どこかで思いながら働いていた気がするんです。
でも、独立した今は、自分にしかできない仕事をやっているという、自負があります。

(自宅を開放して教室を開くような)私のような働き方があることが、世間にはまだまだ浸透していないと感じています。
実際にこうしたスタイルの働き方を知って衝撃を受けた、とおっしゃる方が多いんです。

だから、他のママたちが私の働き方を見て、「もしかしたら私にもできるかも?」と思ってもらえるといいな、と思います。

———ロールモデルに?

そうですね。
あと、4月から教室をリニューアルするんですが、そこではプロ向けの講座も開くことにしました。

そこでは、受講生の方が今持っている悩みに寄り添って解決に導く、コンサルティング的なこともやっていく予定です。

そして今後は、少しでも多くの女性の背中を押してあげられるよう、自分の働き方を通して、発信していきたいなと考えているんです。

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起業ママコミュニティPowerWomen
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2011年から「ママが笑顔で働き続ける」をテーマに活動する起業ママのコミュニティです。 働き方の選択肢に「起業」を加えることで、ママの意欲に蓋をしない社会をつくりたい。 家庭での「ママ・妻」として、社会で「働く人」として、「自分を活かす働き方」を後押しするため、プロジェクト株式会社が運営しています。
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